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横浜地方裁判所 昭和57年(レ)3号 判決

控訴人(反訴被告)

甲田一郎

右訴訟代理人

池田輝孝

被控訴人(反訴原告)

甲田花江

右訴訟代理人

久保内美清流

主文

一  本件控訴を棄却する。

二  被控訴人(反訴原告)が別紙物件目録記載の建物につき、所有権を有することを確認する。

三  控訴費用及び反訴訟費用は、いずれも控訴人(反訴被告)の負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  控訴人(反訴被告、以下控訴人という。)

1  原判決を取消す。

2  被控訴人(反訴原告、以下被控訴人という。)は、控訴人に対し、別紙物件目録記載の建物につき、横浜地方法務局茅ケ崎出張所昭和五三年一二月一五日受付第三〇三四七号をもつてした同月一〇日贈与を原因とする所有権移転登記の抹消登記手続をせよ。

3  被控訴人の反訴請求を棄却する。

4  本訴一、二審訴訟費用及び反訴費用は、いずれも被控訴人の負担とする。

二  被控訴人

主文同旨

第二  当事者の主張

((本訴について))

一  請求原因

1  (所有権に基づく抹消登記請求)

(一) (本件建物所有権の原始取得)

控訴人は、昭和三〇年はじめころ、次のとおり、建築主としてその名において、別紙物件目録記載の建物(以下本件建物という。)を建築し、その所有権を原始的に取得した。即ち、

(1) 本件建物の建築費及びその敷地賃借権の権利金の大部分は、控訴人が被控訴人との婚姻に際して持参した金一五万円の持参金、控訴人の給料及び賞与をもとに貯わえた預貯金などでまかなわれた。もつとも、残りの一部は、被控訴人が神奈川県高座郡○○○村××(現在は藤沢市××)所在の甲田家の土地(以下××の土地という。)を処分した代金から支払われたが、右は控訴人が被控訴人から該支払金の贈与を受けたものと評価されるべきである。

(2) 本件建物の建築は、控訴人が茅ケ崎に家を建てて転居することを提案したことに始まるものであつて、当初、被控訴人が反対したのを控訴人が説得した結果実現したものであり、被控訴人の発意によるものではなかつた。

(3) 本件建物の建築確認申請は、控訴人名義でなされた。

(4) 控訴人は、本件建物の建築工事に携わつた大工に対し、建築主として建築請負工事の注文をし、請負工事代金の領収書の大部分も控訴人宛とされていた。

(二) (本件建物所有権の贈与による取得)

仮に、本件建物につき建築による控訴人の原始取得が認められず、建築による本件建物の原始取得者が被控訴人であつたとしても、控訴人は、本件建物完成後控訴人名義で所有権保存登記を経由した昭和三三年五月一日の前後ころ、被控訴人から本件建物の贈与を受けてその所有権を取得した。

(三) (被控訴人名義の所有権移転登記の経由)

本件建物については、控訴人に無断で横浜地方法務局茅ケ崎出張所昭和五三年一二月一五日受付第三〇三四七号をもつて、同月一〇日の贈与を原因として、控訴人から被控訴人に対し所有権移転登記が経由されている。

2  (移転登記申請行為の瑕疵による抹消登記請求)

仮に、本件建物の所有権が控訴人にあると認められないとしても、前記1(三)の所有権移転登記手続は、被控訴人が控訴人の印鑑を盗用し、同人に無断でなしたものであつて、申請手続に瑕疵があるから、右による被控訴人への所有権移転登記は無効なものというべきである。

3  よつて、控訴人は、被控訴人に対し、主位的には本件建物の所有権に基づき、予備的には前項の登記申請行為の瑕疵を理由として、本件建物につきなされた被控訴人への所有権移転登記の抹消登記手続を求める。

二  請求原因に対する認否

1(一)  請求原因1(一)冒頭の事実(控訴人の本件建物所有権の原始取得)は否認する。

(1) 同1(一)の事実のうち、控訴人が被控訴人との婚姻に際して金一五万円を持参した事実は認め、その余の事実は否認する。

本件建物の建築資金及び敷地貸借権の権利金は、すべて××の土地の売却代金でまかなわれたものであり、被控訴人は、控訴人に右売却代金を贈与したこともない。

(2) 同1(一)(2)の事実のうち、控訴人が茅ケ崎に家を建てて××から転居することを提案し、当初被控訴人がこれに反対したが、控訴人が被控訴人の反対を説得した事実は認め、その余の事実は否認する。

(3) 同1(一)(3)の事実(建築確認申請の名義人が控訴人であること)は知らない。

(4) 同1(一)(4)の事実は否認する。

本件建物の基本設計は、被控訴人とその弟甲田太郎(以下太郎という。)が立案し、建築請負工事の注文には甲田家の事実上の当主であつた被控訴人が当つた。

(二)  同1(二)の事実のうち、本件建物につき昭和三三年五月控訴人名義で所有権保存登記がなされた事実は認め、その余の事実は否認する。

(三)  同1(三)の事実のうち、本件建物につき被控訴人への所有権移転登記が経由されたことは認めるが、右が控訴人に無断でなされたことは否認する。

2  同2の事実のうち、本件建物につき被控訴人が同1(三)の所有権移転登記を経由した事実は認め、その余の事実は否認する。

仮に、右所有権移転登記の申請手続に瑕疵があるとしても、本件建物は、元来被控訴人の所有に属するものであるうえ、控訴人は、同時履行の抗弁権など登記名義の回復を正当ならしめる実質的利益を有しないから、右登記は有効なものというべきである。

三  仮定的抗弁

1  請求原因1(一)、(二)に対して(被控訴人への本件建物贈与)控訴人は、昭和五三年七月ころ、被控訴人に対し、本件建物を贈与し、その所有権を喪失した。

2  同1(二)に対して(控訴人への本件建物贈与の取消)

控訴人主張の昭和三三年五月ころの控訴人への本件建物の贈与は、控訴人と被控訴人の婚姻期間中になされたものであるところ、被控訴人は、同じく婚姻期間中である昭和五三年七月ころ、これを取消す旨の意思表示をなし、右意思表示は、そのころ控訴人に到達した。

3  同2に対して(信義則違反)

控訴人が、被控訴人に対し、本件建物につき控訴人から被控訴人に対してなされた所有権移転登記の抹消を求めることは、次の事情のある本件においては信義則上許されない。即ち、

(一) そもそも、本件建物の所有権は、建築により原始的に被控訴人に帰属したのに、保存登記申請に関与した控訴人が、司法書士の意見により登記手続の便宜上、被控訴人との合意によらず一方的に控訴人名義で保存登記したものであつた。

(二) 控訴人は、日常生活において家族のことを省みず、パチンコ、魚釣り及び飲酒に耽り、そのため次第に夫婦仲が悪化して控訴人、被控訴人間で離婚話が生ずるに至つたものであつた。

(三) 控訴人は、本件建物につき被控訴人への所有権移転登記が経由されたころ、被控訴人に対し「こんなボロ家はいらない、くれてやる。」などと述べたりしたが、その後、本件建物が自己の所有に属することを強硬に主張し、暴行脅迫をもつて被控訴人及び控訴人・被控訴人間の子供らを本件建物から追い出し、被控訴人が控訴人の右主張を認めない限り離婚についての財産分与の話合いにも応じないとの態度を固執している。

四  仮定的抗弁に対する認否

右事実はいずれも否認する。

((反訴について))

一  請求原因

1(一)  (本件建物所有権の原始取得)

被控訴人は、弟の太郎が父甲田乙吉から家督相続した××の土地、建物を処分して得た資金により、昭和三〇年正月から夏ころにかけて、建築主としてその名において本件建物を建築し、その所有権を原始的に取得した。

(二)  (本件建物所有権の贈与による取得)

仮りに、前項の事実が認められないとしても、被控訴人は、昭和五三年七月ころ、控訴人から本件建物の贈与を受けてその所有権を取得した。

2  しかるに、控訴人は、被控訴人に対し、本件建物につき控訴人から被控訴人に対してなされた所有権移転登記の抹消登記手続を求め、被控訴人の所有権を争つている。

3  よつて、被控訴人は、控訴人との間で、本件建物が被控訴人の所有に属することの確認を求める。

二  請求原因に対する認否

1(一)  請求原因1(一)の事実のうち、本件建物が昭和三〇年正月から同年夏ころの間にかけて建築された事実は認め、その余の事実は否認する。

本訴請求原因1(一)のとおり、控訴人は、建築資金の大部分を負担して建築主としてその名において本件建物を建築し、その所有権を原始的に取得した。

(二)  同1(二)の事実(本件建物の被控訴人への贈与)は否認する。

2  同2の事実は認める。

三  抗弁―請求原因1(一)に対して(本件建物の控訴人への贈与)

本訴請求原因1(二)に同じ

四  抗弁に対する認否

本訴請求原因1(二)に対する認否に同じ。

第三  証拠〈省略〉

理由

第一本訴について

一本件建物の原始取得者について

1  請求原因1(一)(1)の事実のうち、控訴人が被控訴人との婚姻に際して金一五万円を持参した事実及び、同1(一)(2)の事実のうち、控訴人が茅ケ崎に家を建てて××から転居することを提案し、当初被控訴人がこれに反対したが、控訴人が被控訴人の反対を説得した事実は、いずれも当事者間に争いがなく、右各事実に、〈証拠〉を総合すると、次の事実が認められる。

(一) 被控訴人の父甲田乙吉(以下乙吉という。)は、昭和二一年一一月二三日、被控訴人の母である妻ハン(以下ハンという。)と当時一六歳の被控訴人を頭に妹さち子、弟太郎の三人の未成年の子を残して死亡し、太郎が××の家屋敷と約七反の田畑を含む甲田家の家督を相続した。

乙吉の死後約二年を経過した昭和二三年一二月五日、病床にあつて死期の近付いたことを感じたハンは、自分の死後太郎の後見を託すことにしていた被控訴人の叔父の○○○○と長子である被控訴人を呼び寄せて協議して、ハンの死後は被控訴人をして太郎が家督相続した甲田家の財産を実質上一切管理処分させることとし、その三日後に死亡した。

(二) 被控訴人は、昭和二六年四月一七日、控訴人と婚姻したが、ハンの遺志をうけて被控訴人が甲田家の財産を実質上管理して弟妹の太郎、さち子の面倒をみていた関係で、被控訴人が戸籍の筆頭者となり、控訴人が甲田の氏を称し、控訴人は、いわば入婿の形で××の被控訴人居宅に入つて被控訴人らと生活を共にした。

控訴人は、婚姻後N機株式会社(以下N機という。)に勤務し、被控訴人も、従前どおり○○市役所に勤務して共働きをしていたが、被控訴人は婚姻の約半年後妊娠したため同市役所を退職した。

婚姻後の控訴人、被控訴人、その間の幼児及び太郎、さち子の生計は、控訴人の給料、被控訴人の畑仕事により得られる収入でまかなわれていたが程なくさち子は住込みで外へ働きに出、太郎も昭和三〇年春には高校を卒業して就職し自活するようになつた。

(三) 控訴人の勤務していたN機は、経営不振のため、N自動車株式会社、T工業株式会社、T機関工業株式会社と次々に社名を変更し、その都度経営陣も交代していたが、遂に昭和三七年ころには同社も倒産に追込まれ、従業員の大部分は退職し、控訴人を含む一部の従業員は辛うじて同会社を引継いだN工業株式会社に雇用されるという状況であつた。

とりわけ、朝鮮戦争終了後の昭和二七年から昭和三〇年ころにかけては、N機(もしくはその後身会社)は、朝鮮戦争中の特需景気の反動のナベ底不景気に見舞われて極度の経営不振状態にあり、残業も少なく控訴人の給料及びボーナスは控訴人・被控訴人ら一家の生計を維持するのに精一杯であつてその中から預貯金をする余裕などはなかつた。

控訴人が、被控訴人との婚姻に際して持参した金一五万円は、昭和三〇年より前に××の居宅の屋根の修理代や、採算がとれず結局のところ失敗に終つた養鶏所の資金として費消された。

(四) 控訴人は、昭和三〇年はじめころ、弟が茅ケ崎に転居したことに刺激され、自分も茅ケ崎に住みたいと思い立ち、東京の蒲田工場に転勤になつたとか、××の被控訴人居宅近くに居住していた控訴人の実母と離れて住むのが被控訴人のためにも好ましいとかいつた理由を挙げて、茅ケ崎に家を新築して××から転居しようと言い出した。

被控訴人は、当時生活に余裕がなかつたため、当初は右転居の計画に反対したが、控訴人の熱心な説得に応じ、××の土地を売却して資金をつくり右計画を実行することに同意した。

(五) そこで、被控訴人は、昭和三〇年春ころ、弟太郎と相談して同人の了承を得て(後見人の○○○○からは事後に承諾を得た。)同人が家督相続していた土地約七反を丙山○○他数名に合計金約一〇〇万円弱で売却し、そのうちから弟太郎及びさち子の将来の結婚資金として合計金三〇万円程度を留保して、残りの金約七〇万円を本件建物建築資金に充てることにした。

(六) 茅ケ崎に新築する本件建物の間取りなどの計画については、主として被控訴人と弟太郎が当たり、控訴人は玄関の造作などについて意見を述べるにとどまつた。

また、本件建物の建築工事を請負つた大工の○○○○との交渉にも殆んどすべて被控訴人が当たり、控訴人は関与することがなかつた。

(七) 被控訴人は、前記××の土地売却代金の中から、本件建物の工事代金として井戸、下水道など付帯工事分を含めて金約七〇万円を大工の○○らに、また、本件建物敷地約七六坪の貸借権の権利金として合計金五万三四〇〇円を地主である○○○○に、それぞれ支払つた。

2  右1認定の諸事実とりわけ、被控訴人が甲田家の長子として両親死亡後の甲田家の財産につき管理処分をしていたこと及び本件建物建築資金のすべてが甲田家固有の財産を処分した金員でもつて支払われていることなどによれば、本件建物を建築してその所有権を原始的に取得したのは、被控訴人であると推認するのが相当であり、控訴人をもつて本件建物の原始的取得者と認めることはできない。

もつとも、前記各証拠によると、本件建物の建築確認申請は、控訴人名義でなされており、また、大工の○○の領収書の一部も控訴人宛(一部は単に甲田様宛)になつている事実が認められるが、先に認定した諸事実に鑑みると、かような事実もいまだ右認定を左右するに足りない。

二控訴人への本件建物の贈与について

1  請求原因1(二)の事実のうち、本件建物につき昭和三三年五月控訴人名義に所有権保存登記がなされた事実は当事者間に争いがなく、〈証拠〉によれば、昭和五三年一二月一五日本件建物につき贈与を原因として控訴人から被控訴人へ所有権移転登記が経由されるまで二〇年余の間控訴人の所有名義のままとされていた事実が認められる。

しかし、前記一認定の諸事実に加え、次に認定する事実の存する本件においては、右各事実から控訴人が被控訴人より本件建物の贈与を受けたものと推認することはできない。即ち、

前記一1挙示の各証拠及び弁論の全趣旨によれば、本件建物の保存登記が控訴人名義でなされたのは、本件建物の建築確認申請が控訴人名義でなされていたことや工事代金の領収書の一部が控訴人名義となつていたことに加え、当時被控訴人が第三子を出産する間際であつたため、控訴人が司法書士に右保存登記申請手続を依頼したところ、右司法書土から現金収入に乏しい家庭の主婦である被控訴人の名義で保存登記をすることが困難である旨告げられ、保存登記名義人を控訴人・被控訴人のいずれにするかの選択を漫然司法書士の事務処理上の便宜に委ねたことによるものであり、また、被控訴人が本件建物につき控訴人名義でなされた保存登記をそのまま放置していたのは、夫婦間において事を荒立てることが憚かられたことによるものである、と認めることができる。

したがつて、本件建物の保存登記が控訴人名義でなされ、その後長期間そのまま放置された事実をもつて、控訴人主張の贈与がなされたことの証左とすることは当らない。

三登記申請行為の瑕疵による抹消登記請求について

1  控訴人は、本件建物につき昭和五三年一二月一五日経由された被控訴人への所有権移転登記は、登記簿上の所有名義人たる控訴人に無断でなされた瑕疵ある申請行為に基因する無効なものであるから、本件建物の所有権がいずれにあるかにかかわらず、抹消されるべきである旨主張する。

2 そこで考えるに、登記の有する不動産の権利関係公示の機能、無益な移転登記の往復を省く登記手続上の経済、売買代金債権による同時履行の抗弁権など登記義務者の有する移転登記を拒みうる実質的利益などを考え合せると、現在の登記名義が実体的権利関係に合致しているときは、現登記名義人への所有権移転登記申請が登記権利者によつて登記義務者に無断で自力救済的になされ、登記義務者に登記申請意思が存しない場合であつても、登記申請手続に右瑕疵が存することの一事をもつて、実体的権利関係に合致する登記を直ちに無効と解さなければならないいわれはなく、該登記も現在の実体的権利関係に合致している以上有効と解すべく、ただ、旧登記名義人たる登記義務者において、該移転登記が自己に無断でなされたことのほか、該移転登記当時自己が売買代金債権の同時履行の抗弁権など該移転登記を拒みうる正当な実質的利益を有していたことを主張立証した場合に限り、旧登記名義人から現登記名義人に対して先になされた所有権移転登記の抹消登記を請求しうるものと解するのが相当である。

これを本件についてみるに、控訴人は、単に控訴人から被控訴人への所有権移転登記の申請行為の瑕疵を主張するのみで、右所有権移転登記当時これを拒みうる同時履行の抗弁権などの正当な実質的利益を有していたことを主張立証しない(かえつて、前記一1認定の諸事実によれば控訴人には右正当な実質的利益が存しなかつたことがうかがわれる。)のであるから、控訴人の所有権移転登記の申請行為の瑕疵に基づく右所有権移転登記抹消請求の主張は理由がない。

3 なお、仮りに、控訴人主張の如く登記義務者に無断でなされた瑕疵ある登記申請行為に基づく所有権移転登記は、当該不動産の所有権がいずれに存するかにかかわらず、右申請行為の瑕疵のみによつて無効であつて抹消されるべきものであるとする見解が正当であるとしても、前記一1認定の事実、〈証拠〉を総合すると仮定的抗弁3の事実(控訴人が被控訴人に対して求める本件建物の所有権移転登記の抹消請求が信義則に違反して許されないこと)を認めることができる(原審及び当審における控訴人尋問の結果中右認定に反する部分は措信しがたい。)本件においては、それ故結局、控訴人主張の登記申請行為の瑕疵に基づく本件建物につき被控訴人に対しなされた所有権移転登記の抹消登記を求める請求は理由がない。

四以上によれば、いずれにせよ、その余の点につき判断するまでもなく、本件建物につき被控訴人に対してなされた所有権移転登記の抹消登記を求める控訴人の本訴請求は理由がない。

第二反訴について

被控訴人が本件建物を建築してその所有権を原始的に取得した事実が認められることは、前記第一の一に認定説示したとおりであり、また、控訴人が被控訴人から本件建物の贈与を受けた旨の抗弁事実が認められないことも、前記第一の二に判示したとおりである。

してみれば、その余の点につき判断するまでもなく、本件建物につき所有権確認を求める被控訴人の反訴請求は理由がある。

第三結論

以上の次第であるから、控訴人の本訴請求を棄却した原判決は相当で本件控訴は理由がないからこれを棄却すべきであり、被控訴人の当審における反訴請求は理由があるからこれを認容すべきである。

よつて、訴訟費用の負担につき民訴法九五条、八九条を適用して主文のとおり判決する。

(浅香恒久 佐藤嘉彦 太田剛彦)

物件目録〈省略〉

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